インタビュー

やらない理由を考えるよりも、やる方法を考える――その信念のもと挑戦し続ける

やらない理由を考えるよりも、やる方法を考える――その信念のもと挑戦し続ける

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病院での10年間、慢性心不全看護認定看護師として最前線に立ち続けてきた吉川さん。

しかし、どれだけ心を込めても、患者さんの退院後の生活までは支えきれない。その葛藤が、彼を訪問看護という新たな世界へと導きました。

「やらない理由を考えるよりも、やる方法を考える」そんな信念を胸に、困難な症例にも果敢に挑み続ける彼の物語は、看護の本質とは何かを問いかけます。

病院では叶わなかった、「その先」を支えたいという想い

——訪問看護に興味を持ったきっかけを教えてください。

病院勤務時代は、慢性心不全看護認定看護師として、生活指導や退院調整に携わっていました。しかし、病院ではどれだけ丁寧にケアをしても、その先の生活まで継続して支えることはできません。再入院を繰り返す患者さんを見るたびに、心の中にもどかしさが積み重なっていきました。

病院では退院調整に関して、最初の入り口の部分しか関われない。その先をもっと深く支えたいと思うようになったのがきっかけです。

——firstに入職した決め手は何でしたか?

実は代表の髙橋とは、病院勤務時代に一緒に働いていた経緯があります。訪問看護ステーションを立ち上げて、利用者様や家族ファーストで取り組んでいる姿を見て、自分の目指す看護と共感する部分が多くありました。彼の人柄や熱い想いは以前から知っていたので、せっかく働くのであれば、髙橋の下でという想いも強かったですね。

ただ、看護教員として数年働いていたので、臨床から離れていたこともあり、採血や点滴といった医療行為への不安は正直ありました。在宅の制度や知識も不足していて、何がわからないのかがわからない…という漠然とした不安。

でも髙橋から「あまり気負いせずに、入ってからいろいろわかっていってくれたらいいから」というメッセージをもらい、入職後に学んでいこうという前向きな気持ちで踏み出すことができました。

「やってみる」文化の中で生まれた、教育という新しい挑戦

——入職後、firstという会社をどう感じましたか?

入職して最初に感じたことは、この会社が「チャレンジ精神にあふれている」ということです。どんなに難しい症例であっても、相談があれば受け入れて、介入していく。みんなで話し合いながら、その問題や課題を解決していく姿勢がすごく素敵だなと思いました。それがやりがいにもつながっています。

「とりあえずやってみる」という文化があるんです。やらない理由を考えるよりも、やる方法を考えることが大切だと思っています。線引きというよりも、「これを今やることが、どれだけ自分たちにとってワクワクすることなのか」「成長する機会につながるのか」というポジティブな目線で物事を捉えるようにしています。

——振り返って、特に挑戦だったと感じた仕事はありますか?

挑戦という捉え方は人によって変わると思うのですが、私が特に力を入れたのは「first教育プログラム」の作成です。経験の浅いスタッフにとって負担が大きくなりすぎないよう、訪問看護師として自立して仕事ができるようになるための段階的な目標設定と支援体制をプログラム化しました。

月ごとの目標設定については、特に重要視しました。難しい症例や困難事例をどんどん引き受けていく風土があるからこそ、常に知識をブラッシュアップしていく必要があります。そこで「5ミニッツレクチャー」という勉強システムも作りました。輪番制でスタッフが担当しながら、知識や技術をアウトプットしていく仕組みです。

教育を大切にすることが、人や組織を強くする。多岐にわたってスタッフを支援していくことが、組織を強くしていく。そう信じています。今後も教育プログラムをブラッシュアップしながら、人と組織を大切にしていく取り組みを続けていきたいと思っています。

病院の価値観と在宅の価値観——失敗から学んだ、ケアの本質

——「理想のケア」に近づけたと感じた瞬間は?

訪問看護の世界に飛び込んで、最初に直面したのは「価値観の違い」でした。病院での経験があったからこそ、最初はその違いをうまく認識できずに関わってしまい、利用者さんのニーズと違う支援体制になってしまったこともあります。

治療を優先する病院と、生活を優先する在宅。そのニーズの違い、価値観の違いを捉えて大切にするようにしてからは、本当の意味で利用者さんに寄り添えるようになったと思います。

その学びが実を結んだのは、心不全患者さんの継続的なケアでした。在宅での心臓リハビリを実践し、再増悪なく経過できたときに確信しました。病院時代にできなかったことができている。自分の理想のケアに一歩近づいたと。

——今、一番やりがいを感じていることは何ですか?

在宅での心臓リハビリの実践に向けたプログラムの作成です。これはすごく自身の成長にもつながっています。毎日仕事が楽しく、充実しています。ポジティブな気持ちで毎日を過ごせるのが、本当に大きいと思います。

個々のキャリアや能力に応じて、いろんなことを任せていただけるのもfirstの魅力です。病院勤務時代は、やりたいことがあっても主任の役割が優先されるジレンマがありました。でも今は、自分がやりたいことを、組織としても推進してくれる。

心不全のある在宅療養者の生活支援、在宅での心臓リハビリの実践、ケアマネジャー向けのセミナーの開催、関係機関への講義など、多岐にわたる活動をさせていただいています。

2歳と0歳の娘、毎日のカメラ、そして看護——仕事と家庭のバランスを支えるもの

——仕事後はどのように過ごされていますか?

2歳と0歳の娘がいるので、家に帰った後は家族みんなで食事をして、子供たちをお風呂に入れて。お風呂の後は絵本の読み聞かせをして、みんなで寝る。家族の時間にあてています。

あと、毎日のルーティンがもう1つあります。2歳の子が生まれるときに購入した、とっておきのカメラです。毎日必ず子供たちの写真を撮ることが自分の中でのルールになっています。高いカメラを買った意味があったよね、と思えるように。

毎日成長する子供たちの瞬間を切り取る。撮った写真を整理するのも忙しいけれど、それが何よりも楽しい時間になっています。

——今後、新しく身につけたいスキルはありますか?

もともと慢性心不全看護認定看護師という専門の資格を持っているので、新しく医療的な資格を取るというよりも、別のベクトルの資格や知識を取りたいという気持ちがあります。そっちのほうが楽しかったり、ワクワクするんじゃないかなと。

たとえば、外に出られない利用者さんたちに、リハビリをしながら外で記念写真を撮って思い出に残したり、心のケアができるように。今はまだ趣味の範囲ですけど、カメラの知識や技術をもっと身につけて、違ったベクトルでケアの質を向上できればと考えています。ちなみに採用ページは私が撮影しました。

火と水——対照的な二人のリーダーが作る組織のバランス

——代表と副代表は、どんな存在ですか?

代表に関しては、もう一度看護に対する熱い想いを抱かせてくれた恩人だと思っています。以前の職場では部署は違っていましたが、よくプライベートも仕事も一緒に過ごしていました。もともとすごく相談できる、気軽に何でも相談できる方です。今も変わらず、些細なことでも相談できる心の拠り所のような存在ですね。

副代表は、新人のときのプリセプターで、何か困ったことがあったときにすごく支えてくださいます。副代表がいるだけで、会社の雰囲気がすごく和むというか、良くなる。なくてはならない存在です。

社長が情熱で燃えている中で、副代表の冷静さというか、穏やかな雰囲気があることで、うまくバランスが取れているような気がします。

——普段、どのように助け合って仕事をされていますか?

誰かの困りごとを自分のこととして、それぞれが考えるスタッフたちだと思っています。そもそも組織自体が発展途上であるということを、みんなが認識している。だから困りごとが出て当然、課題があって当然という考え方なんです。

困りごとや課題が出てきたら、みんなで話し合って解決して、新しく制度設計をしていく。これを繰り返しています。先月生じた困りごとが、今月には新しい制度になって「こういう風にやっていこう」となるので、どんどん働きやすくなっていくんです。

業務に関する困りごとが解決されることで、スタッフの負担が減り、より利用者さんへのケアに集中できる。それがケアの質の向上につながっています。新しく入ってきたスタッフに対しても、ケアの方法や病態理解について気軽に相談できる風土があります。毎日のように相談を受けて、一緒に考えたりアドバイスをしたりしています。

学び続ける覚悟――正解のない世界で描く、これからの未来

——5年後、専門職としてどんな自分になっていたいですか?

病院で10年以上しっかりと勤務してきたことと、そして今在宅の世界にいることで、医療的な視点と生活者としての視点とを併せ持って「利用者さんのこうなりたい」という想いを実現してあげたいです。

ただ、中には現実的なものだけでなく非現実的なものもあるので、医療的な知識と生活者としての視点を持って利用者さんやご家族と相談しながら、折り合いや落としどころを調整できるような医療者になりたいなと思っています。

——firstでどのようになっていきたいですか?

firstとしては、もっといろいろなことにチャレンジして、その時代に応じた新しい課題を常に解決し続けるような存在でありたいと思っています。そのために、ケアの質を高めていけるように、スタッフの教育や制度設計をしながら、楽しみながら働いていきたいですね。

今は心臓リハビリのチームを作って在宅でできる心臓リハビリプログラムに着手していたり、がんの緩和ケアだけでなく、心不全や呼吸不全といった非がんに関する緩和ケアの指針作成を考えていたりと、やりたいことは本当にたくさんあります。

どのスタッフと組んだらより良くなるかを考えながら、今ちょっとずつ着手しています。あと1〜2年後には、また新しいことがいろいろできていると思います。

挑戦し続ける――それが看護の本質

病院では叶わなかった「その先」を支えたいという想いから始まった訪問看護への挑戦。入職当初は病院と在宅の価値観の違いに戸惑いながらも、失敗から学び、今では在宅での心臓リハビリプログラムの作成や教育体制の構築など、多岐にわたる活動を展開しています。

「やらない理由を考えるよりも、やる方法を考える」という信念のもと、困難な症例にも果敢に挑み続ける姿勢。それを支えているのは、チャレンジ精神にあふれる組織文化と、火と水のように対照的でバランスの取れたリーダーシップ、そして困りごとを自分のこととして考え合えるスタッフたちの存在です。

仕事と家庭のバランスも、柔軟な制度と移動時間という自然な切り替えスイッチによって保たれています。

2歳と0歳の娘たちの成長を毎日カメラにおさめながら、そのカメラの技術をいつか利用者さんの心のケアにも活かしたいと考える。

そんな新しい可能性への探求心も、看護への情熱の表れです。

——最後に、これから応募を考えている方にメッセージをお願いします。

リアルをお伝えすると、決して楽な職場ではないと思います。医療依存度が高かったり、緊急度が高かったり、困りごとに全力でサポートしよう、助けようという姿勢があるので、急遽訪問する件数が多くなったり、今まで経験したことがないような疾患や事例に出会うこともあります。だから勉強は必要です。

でも、変化に柔軟に対応できる人、看護が好きな人、何か新しいことにチャレンジしたい人には、すごく向いている環境だと思います。在宅という世界は、一つひとつ全然違う関わり方が必要で、一つとして正解がない世界です。だからまだまだ学び足りない。もっといろんなことを経験したいという思いが強くあります。

正解のない世界だからこそ、学び続ける。挑戦し続ける。そして何より、楽しみながら一緒に新しい看護の可能性を広げていきましょう。