誰にでもできることを、誰よりも丁寧に――それが私の看護
子育てをしながら新たなキャリアに挑戦することは、誰にとっても大きな決断です。
岩﨑さんがfirstに入職したのは、2人の子どもを育てる真っ只中のことでした。不安8割、期待2割。それでも彼女が一歩を踏み出せたのは、かつての先輩である代表の「やれるだけやってみたらいい。みんなでフォローするよ」という言葉があったから。
あれから2年半、訪問看護師としてケアマネージャーとしての顔も持ちながら、今では「看護師って幅広い仕事。どこで働いても自分にしかできないことを生かしながら働きたい」と語る彼女の物語には、迷いながらも前に進み続けた一人の看護師の軌跡が刻まれています。
不安8割からのスタート――それでも飛び込んだ理由
——入職の決め手は何でしたか?
声をかけてくれたのは、新卒のときに一緒に働いていた先輩、今の代表でした。新卒で入った病院で10年間。当時は総合病院の小児科で働いていて、楽しく充実した日々を送っていましたが、心のどこかで「もし新しいことに挑戦するなら、そろそろリミットかな」という思いを抱えていました。
年齢的なことを考えると、このタイミングを逃したら次はない。そんなとき、偶然にも代表と話す機会が訪れました。一緒に働いた期間は1年ちょっとでしたが、右も左もわからない新人時代、病気のことも看護のことも一から教えてくれた恩人です。「新しいことを一緒にやってみない?」というその言葉に、心が揺れました。
子育て中で不安もいろいろあるって正直に話したんです。でも、代表は「やれるだけやってみたらいい。みんなでフォローするよ」って言ってくれて。その言葉が後押しになりました。
——転職への不安はありましたか?
正直、不安8割、期待2割でした。転職も初めて、さらに訪問看護という新しい分野への挑戦。そして何より、入職時にワーキングマザーは自分一人だったので、「どれくらい迷惑をかけてしまうんだろう」「家庭と両立できるのかな」と、心の中は不安でいっぱいでした。
それでも決断できたのは、新しいことへの挑戦を求めていた自分の気持ちと、この縁を大切にしたいという思いがあったからです。「これはもう、行くときなのかな」そう感じた瞬間がありました。
——転職するにあたって、自分の中で決めていたルールはありますか?
新しいことを始めるには、きっといっぱい勉強しないといけないだろうと、入職前から予想していました。看護師として学ぶべきことが山ほどあるだろうけど、家のこともあるし、子どものこともある。
なので、仕事の時間内は全力で仕事に打ち込み、仕事が終わって家に帰ったらちゃんと家のことに目を向ける。そう自分の中で意識していました。シンプルだけど明確な線引きが、働き方の軸になりました。
上下関係を超えて、素直に話せる場所
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——入職後、firstにどんな印象を持ちましたか?
良い意味で、上下関係なく本当に率直に意見を言い合える人たちがいる。それが印象的でした。
当然、考え方が違うこともありますし、意見がぶつかることもあります。でも、結局みんな利用者さんのことを考えているからこそなんですよね。だから、自分の思いや利用者さんに対する気持ち、こういうことをしたいという考えを自然に素直に話せます。すごく居心地の良い空間だなと感じています。
——病院時代とは違いますか?
病院時代は、どうしても先輩が言うことは正しいという雰囲気がありました。でもfirstは違います。
「そういう意見があるのはもちろんわかったうえで、私はこういう風に考えています」「こういうことをしてみたいんです」と、日常的に違う意見をすっと言える。そんな環境です。
ケアマネージャーという新たな挑戦
——ケアマネージャーを始めたきっかけを教えてください。
入職して2年が経った今年1月、居宅支援事業所が開設されました。そして4月から、看護業務と並行して、ケアマネージャーの仕事も担当することになりました。代表が背中を押してくれたんです。「やりたいと思うならやってみて。せっかく資格持ってるんだから」と。
実は、ずっと心の中で焦りを感じていました。周りのスタッフはみんな、看護で得意分野を持っていて、それを活かして訪問している。その姿を見ていると、尊敬半分、焦り半分。自分には何があるんだろうと考えたとき、頭に浮かんだのがケアマネージャーの資格でした。
看護師としてすごく得意って言える能力がないのが、自分の弱みだと思っていたんです。だから、誰にでもできることは誰よりも丁寧にしよう。それが自分のやりがいに繋がると思いました。
——ケアマネージャーの仕事を始めて、何が変わりましたか?
今は、ほとんどが看護師としての訪問ですが、担当のケアマネージャーとして何人かの利用者さんも受け持っています。ケアマネージャーとしての一連の業務もこなす日々は、確かに大変です。でも、得られたものは計り知れません。
まず視点が変わりました。看護師は医療面でのサポートに偏りがちですが、ケアマネージャーは生活全般を支える、在宅チームのリーダーのような立ち位置です。住宅環境に合わせた環境調整、ヘルパーさんの手配、デイサービスの調整など、生活全体を総合的に見る視点が身につきました。考えの幅がすごく広がったと思います。
多職種連携が生む、学びの連鎖
——成長を実感するのはどんなときですか?
ある日、入浴介助で困ったことがありました。利用者さんが筋力低下や痛みで、お風呂の湯船の出入りがうまくできなかったんです。介助の仕方や自分の体の使い方、手すりの位置などどうすればいいかわからず、リハビリのスタッフに相談したところ、その場の環境に合わせた具体的なやり方を教えてもらえました。
実際に試してみてうまくいったときは、利用者さんも自分も嬉しくて「こういう風にしたらいけるね」「怖くないですね」という会話が生まれる。そこから、「じゃあ次はこんなことしてみよう」と広がっていくのが成長を感じるときです。
——病院と在宅の違いは何ですか?
病院では決まった形の部屋に決まったベッドがあります。でも在宅は、その人それぞれのお家。環境も生活スタイルもまったく違います。だからこそ、多職種で知恵を出し合うことが、より良いケアにつながっていきます。
考え方も視点も違う職種のスタッフと話す中で、ハッとすることも。常に学びが得られるので、それが成長を実感する瞬間ですね。
誰にでもできることを、誰よりも丁寧に
——理想の看護に近づけたと感じた瞬間はありますか?
振り返る癖をつけないと毎日が何となく流れてしまうので、良いことも悪いことも振り返るようにしています。看護師として突出した能力がないのが自分のウィークポイントだと思っていたので、その分誰にでもできる事は誰よりも丁寧にしようと。
それが利用者さんにきちんと伝わって、「あなたがきてくれたら安心する」と言われたときは、とても温かい気持ちになりました。
——理想の看護に近づくために、具体的にどんなことを意識していますか?
目線を合わせることと、訪問に行ったら自分から必ず名乗ることです。いろいろなスタッフが訪問するので、体に触れながら話しかけるんです。「今日は手先が冷たいですね」「今日はよく動きますね」って。そうやって関わることを意識しています。
点滴など、医療技術的なところで緊張することもあります。そういうときは、事前に勉強したり、得意なスタッフと一緒に訪問させてもらったりして、学ぶ機会を自分から作っています。
看護師としての経験がある程度あっても、今まで経験のない技術や病気はたくさんあります。だから、「ちょっと自信がない」「一緒に見てほしい」と言ったときにしっかり応えてくれる環境はとてもありがたいです。
助け合いが当たり前にある日常
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——firstのスタッフはどのように助け合っていますか?
午前の訪問が長引いてしまったときや、午後の利用者さんが急に具合が悪くなったときは「次の訪問、変わるよ」という声が自然に飛び交います。あまり行ったことのない利用者さんの家で困ったことがあってスタッフに電話したら、「今の訪問が終わったらそっち向かうね」と言ってくれました。
嫌な顔をせずに助けてくれるので、素直に頼ろうと思えます。
助けてもらった経験があるからこそ、今度は自分が後輩や同僚を支える番です。そうすることで、お互いを支え合う「いい循環」が自然と生まれます。
「誰にでも初めてのことはあるし、それに対する不安も絶対みんなある。だから、自分の失敗談とか、こんな時に助けてもらったよっていう話をするようにしているんです。みんな通る当たり前の道だよ」って。
——代表と副代表はどんな存在ですか?
代表は常に新しいことに挑戦していて、本当にタフですね。人を惹きつける力があって、代表と一緒なら何でもできそうな、やってみようと思えるような存在です。副代表は懐の深さが半端ない。一緒にいて安心感があります。
代表と副代表のバランスもfirstの強みだと思います。代表が会社のシステムを整え、スタッフを集める。副代表は訪問に回りながら、現場が円滑に回るようサポートする。二人の役割分担が絶妙で、会社全体が良い塩梅で回っています。
代表からは、一度も否定されたことがありません。「こんなことできるの?」って思うような大きな夢をちゃんと実現している。有言実行ですね。
充実した日常が、仕事への活力になる
——仕事が終わったあとの過ごし方を教えてください。
仕事が終わったら、急いで子どもの保育園と学童に迎えに行きます。家に着いたらお風呂に入って、ご飯の支度をして、子どもと少し遊んだらそのまま一緒に寝てしまうことが多いです。
家に帰ってからはバタバタなので、仕事のことは良い意味で忘れています。自分の時間は少ないけれど、それが逆に切り替えになっているのかもしれません。
——仕事と家庭の両立で、助けられている制度はありますか?
持ち帰りの仕事がないのは、すごくメリットだと思っています。「ここからは母親としての時間」「ここからは看護師として仕事をする時間」ときれいに分けられるので。
直行直帰が認められていたり、時間単位で休暇が取れたり、時間外対応は専任の担当者がいたりと、とても柔軟に働けます。保育園からお迎え要請の電話があったときに、後ろ1時間だけ早退するといったこともできるんです。
「ハッピー休暇」という制度もあります。名前の通り、楽しいことに使おうという休暇です。子どもと過ごすために使ったり、今年は数年ぶりに夫と二人でご飯に行こうという話をしていたり。日常の充実が仕事への活力になると思っています。
未来の自分、未来の看護
——今後、新しく身につけたいスキルはありますか?
新たにというよりは、取った資格を活かし続けたいです。firstに入職してから、糖尿病療養指導士、医療的ケア児コーディネーター、そして訪問のために小型バイクの免許を取りました。
資格を取って終わりじゃなく、会社や看護に還元できるようにしたいと思っています。そのために、勉強会に参加し続けたり、みんなで勉強会を開いたりして、研鑽を積んでいきたいです。
——5年後、どんな自分になっていたいですか?
具体的なビジョンは、実はあまり描いていません。ずっと全力疾走で走り続けて、なんとなく今に至ったという感覚なんです。
あまり先の未来のことは考えていないので、正社員のままなのかパートなのか、そのへんもわかりません。でも、とてもやりがいがある仕事なので、5年後も自分が楽しんでこの仕事に取り組めていたらいいなと思います。
「自分にしかできない看護」を見つける旅

不安8割からスタートした訪問看護師としての人生は、2年半が経った今、大きく花開いています。ケアマネージャーとしての顔も持ち、多職種連携の中で視野を広げ、利用者さんから「あなたが来てくれたら安心する」と言われる存在になりました。
「誰にでもできることを、誰よりも丁寧に」。得意な技術がないと感じるからこそ、基本的なことを誰よりも大切にする。その積み重ねが、利用者さんの安心につながっています。
そして、自分が助けてもらった経験を次は後輩に伝え、失敗談を共有し「みんな通る道だよ」と背中を押す。そんな循環が、firstという会社の文化を作っています。
——最後に、これから応募を考えている方にメッセージをお願いします。
firstは、本当に魅力的な会社だと思います。上下関係なく意見を言い合える環境があって、困ったときには自然に助け合える仲間がいます。
直行直帰ができたり、時間単位で休暇が取れたり、ハッピー休暇があったりと、働きやすい制度も整っています。何より、自分が挑戦したいと思ったことを「やってみたらいい」と背中を押してくれる人たちがいることが一番大きいです。
訪問看護は確かに大変です。利用者さんの家というそれぞれ違う環境の中で、最善のケアを考えなければなりません。でも、それがおもしろいと感じられる人なら、ここできっと成長できると思います。
在宅は、病院とは違う視点が必要です。医療だけではなく、生活全体を見る。家族のサポートも含めて、その人の暮らしを支える。そういうことに興味がある方、丁寧に関わることを大切にしたい方に、ぜひ来てほしいです。