インタビュー

「歩けなかった人が歩けるようになった」在宅医療で見つけた理想のケア

「歩けなかった人が歩けるようになった」在宅医療で見つけた理想のケア

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理学療法士の寺脇さんがfirstに入職を決めたのは、SNSで見た「地域への熱い想い」。実際に飛び込んだ在宅医療の現場は、想像以上に挑戦的で、想像以上に温かいものでした。

回復期リハビリテーション病院から訪問看護の世界へ。急変リスク、複雑な疾患、エビデンスすら出ていない症例――不安を抱えながら踏み出した一歩の先で、寺脇さんは本当のチーム医療と出会います。

利用者さんの体調が急変した入職1ヶ月目のあの日から、人工呼吸器をつけた利用者さんとリハビリに挑んだあの瞬間まで。寺脇さんが語る、在宅医療の最前線で見つけた「理想のケア」とは。

SNSで見た「熱さ」が、背中を押した

——firstに入職した決め手は何でしたか?

いくつか他の事業所も見学に行きましたが、firstは地域に対して、そして看護やリハに対して熱い想いを持っているのが伝わってきました。

最初に会社のInstagramと代表のXを見たんですが、SNSでの発信から雰囲気がわかりやすかったというのもあります。どんな利用者さんと関わっているのか、スタッフがどんな表情で働いているのか。そういうリアルな姿が見えたことが大きかったです。

当時は回復期リハビリテーション病院で働いていて、どこかゴールが見えている感じがありました。退院という明確な区切りがあって、その先の生活までは深く関われない。

でも訪問看護なら、その人の生活そのものに入り込んで、本当に必要な支援ができるのではないか。そう考えて、この世界に飛び込むことを決めました。

不安だった「急変対応」――1ヶ月目の出来事がすべてを変えた

——入職前、正直何が一番不安でしたか?

一番不安だったのは、急変時の対応です。回復期リハビリテーション病院は病状が落ち着いている方が多く、リハビリに集中できる環境でした。

でも訪問看護になると、急変リスクが常にあります。それに、在宅にいる方は複数の疾患を抱えていることが多く、病態も複雑です。

なかにはエビデンスが出ていないくらい難しい症例に出会うこともあります。そういう予測がついていたので、「自分に対応できるのか」という不安は正直ありました。

——その不安は、実際に入ってみてどうでしたか?

不安はもちろんありましたが、入職して1ヶ月くらいでその不安が解消される出来事がありました。利用者さんの体調がおかしいという場面に遭遇して、すぐに看護師さんに電話したら本当にすぐ来てくれて、的確に対応してもらえたんです。

もちろん自分で考えることも必要ですが、このような連携が可能だと安心感があります。悩んだら相談という形が最初からできていたので、ずっと不安を抱えたまま働くということはありませんでした。

「わからないことは聞ける」「困ったら助けてもらえる」という環境があることが支えになっています。

在宅医療の最前線で見た、プロフェッショナルの姿

——入ってすぐ「firstってこういう会社だな」と思った出来事はありますか?

入職してすぐ、「看護師さんが強い」と感じました。印象的だったのは、人工呼吸器をつけて在宅に戻ってきた方のケースです。呼吸状態が悪く、嚥下も難しい状態で、リハビリをどう進めるべきか迷っていました。

でも、看護師さんがしっかりアセスメントしてくれて、リハビリを進めて良いかという判断をある程度レールとして敷いてもらえました。そのおかげで、安全にリハビリを進めることができたんです。

——病院とは違うと実感したことはありますか?

病院と比べると、訪問看護は自分で考えて、自分で判断して動く場面が多いです。急に予定が空いたときに、今できることは何だろうと考えながら、他のスタッフのスケジュールも見て、自分から動く。

そういう主体性が求められる環境です。でもそれが、自分の成長につながっていると感じています。

挑戦の連続――循環器、呼吸器、末期の利用者さんとの向き合い方

——今振り返って「あれは挑戦だったな」と思う仕事はありますか?

何か印象的な出来事というよりは、循環器疾患や呼吸器疾患、末期の方に入るときは、入職して1年半くらい経った今でも挑戦というか、しっかりアセスメントしながら慎重に進めています。

以前よりは、自分で考えて実施できるようになったと思います。こちらから発信して相談できるようにもなりました。ずっと気にかけてもらっているよりは、自分から必要なタイミングで聞ける。それが、少し成長できた証かなと思います。

——助言をもらって「助かった」と思った出来事はありますか?

印象的だったのは、特養で発熱している利用者さんがいたときです。感染症かもしれないという予測はつきましたが、在宅の場でどう動いていいかわからなかったんです。その方は入院も希望していなくて、在宅でケアを続けることになっていました。

そこで看護師さんにすぐつないで、訪問診療のドクターとやりとりしてもらいました。点滴の準備もしてもらって、迅速に対応できたおかげで、熱も長引かずに済んだんです。

「歩けなかった人が歩けるようになった」――理想のケアが実現した瞬間

——理想のケアに近づけたと感じた瞬間はありますか?

単純に「良くなった」ということが、自分の中で理想のケアです。特に印象的だったのは、病院でリハビリを3ヶ月、4ヶ月やってもうまくいかなかった方が、在宅でケアを受けながらリハビリを進めたら、状態が劇的に改善したケースです。

看護師さんと一緒に栄養のことを考えたり、全身の状態を整えたりしながらリハビリを進めて、最終的には買い物に行けるようになったんです。歩けるようになって、外に出られるようになった。その瞬間を見たときは、これがやりたかったんだって心から思いました。

——逆に「もうちょっとこうすればよかった」と思うことはありますか?

もっと早い段階で、ケアマネージャーさんや訪問診療の先生と情報共有できていたら、もっとスムーズに進められたかもしれないと思うことはあります。

時間を見つけて、もっと積極的にコミュニケーションを取りに行く。それが今後の課題だと感じています。

成長を実感する日々――「人を人間として見る」視点が身についた

——「ここでなら成長できる」と実感したのはどんなときですか?

「人を人間として見る」というか、リハビリだけじゃない視点がついてきたかなと思います。病院にいたときは、どうしても機能回復に焦点が当たりがちでした。でも在宅では、その人の生活全体を見る必要があります。家族関係、経済状況、住環境、価値観。そういったすべてが、リハビリの成果に影響してくるんです。

それを教えてくれたのは、上司や看護師さんたちです。上司はそもそもそこに強い視点を持っていますし、看護師さんたちも常に利用者さんを生活者として見ています。その姿勢を間近で見て、自分も少しずつ変わってきたと感じています。

具体的にこれと言うのは難しいですが、日々の訪問の中で「この人にとって本当に必要なことは何か」を考える習慣がついてきました。

脳卒中認定理学療法士を目指して――5年後の自分像

——新たに身につけたいスキルや資格はありますか?

現段階で取ろうとしているのが、脳卒中の認定理学療法士です。今そのためのポイントを貯めているところで、来年取得できればと考えています。この資格を取るのに2年間くらいかかるので、少しずつ準備を進めています。

なぜ脳卒中なのかというと、もともと回復期リハビリテーション病院で脳卒中の患者さんをたくさん見てきたというのもありますし、在宅でも脳卒中後遺症の方が多いからです。

人によっては、本当に寝たきりだった人が歩けるようになるパターンもあります。今持っている能力をもっと活かせるようにしていきたいですね。

——5年後、どんな自分になっていたいですか?

すべての疾患をしっかり見られるようになって、かつ脳卒中に関しては指導者レベルを目指したいと思っています。

そのために今は、院内の勉強会に積極的に参加したり、外部の研修にも行ったりしています。研修補助の制度があるので、それを利用させてもらって、年間5万円までの補助を受けながらポイントを貯めています。

それと、理学療法士の先輩方からも学ばせてもらっています。先輩たちはそれぞれ得意分野が違うんです。急性期やリスク管理が得意な方もいれば、地域のリハビリに詳しい方もいます。良いところを吸収していきたいです。

土日休みで手に入れたプライベートの時間

——仕事終わりや休日はどう過ごしていますか?

家に帰ったらご飯を作って食べます。焼いたり炒めたり簡単なものですが、自炊することが多いですね。

あとは週に5回くらいバドミントンをしています。土日に行くことが多いですが、たまに仕事帰りに行くこともあります。

——プライベートや家族との時間の使い方は何か変わりましたか?

以前はシフト制で年末年始にまったく休めないといったことも多かったですが、今は土日休みなので、友達や実家の家族と予定を合わせやすくなりました。

あとは研修会にも参加しやすくなりましたね。以前は休みを申請して参加しなくてはいけなかったので、そういうストレスがなくなったのも大きいです。

柔軟な働き方が支えてくれた、体調を崩した日

——働き方で「ありがたいな」と思った瞬間はありますか?

3月頃に花粉症がひどくて体調を崩したことがありました。目が開かなくなるくらいだったんですけど、それに気づいた看護師の先輩と代表が病院に行くように言ってくれて。

その日に休みをもらって病院に行くことができました。そういうことをパッとできる環境であるのが、すごくありがたいと感じています。

——制度面で働きやすいと感じることはありますか?

研修補助はすごく利用させてもらっています。1年間5万円まで出してもらえるので、それで研修のポイントを貯めています。

研修って結構費用がかかるので、この制度は本当に助かっていますね。

代表と副代表――対照的な二人が作る、この会社の空気

——代表と副代表はどんな存在ですか?

代表はとにかく熱い人です。思いついたらすぐやる。前に進んでいくポジティブさと行動力、そして瞬発力。すごく自然にやっているので、本当に尊敬しています。

私は行動の原動力がネガティブから起こることが多いんです。たとえば、利用者さんが良くならなかったら、自分がもっと頑張らないといけないと思って動く。だから代表のようなポジティブさには、いつも刺激を受けています。

副代表は、とにかく優しいです。看護師さんとしてもすごく強くて、頼りになります。いつも「ええやん」って感じですよ。すべての人をうまく肯定してくれるというか、承認してくれる。それをたぶん素でやっているんだろうなと思いながら見ています。

——対照的なお二人がいることで、会社にどんな影響がありますか?

代表はずっと前を引っ張っていく感じ。手前を歩いていくリーダーです。一方、副代表はその場に一緒にいて雰囲気が落ち着くというか、柔らかくなる。そのバランスが良いんだと思います。

締まるところはしっかり締まって、でも仲が良い。それがお二人がいることによる影響なのかなと思います。

これから入る人へ――firstのリアル

——これから入る人に伝えたい、firstのリアルは何ですか?

面接のときにも言われてはいたんですが、思ったより在宅で亡くなられるケースが多いです。だからこそ、看護師さんの強さに支えられながら、自分も成長できる環境だと思います。

疾患が難しい利用者さんも多いのも特徴です。でもその分、学ぶことも多いですし、一人ひとりに向き合うことで、自分の視野が広がっていくのを実感できます。

——どんな人がfirstで働くのに向いていると思いますか?

代表もよく言っていますが、第一に主語が利用者さん。「利用者さんのために」という視点を持てる人は向いていると思います。

働くというよりも、そっちに視点を持っていける人のほうが、この仕事は楽しめると思います。

在宅医療の最前線で見つけた、本当のチーム医療

寺脇さんが語る在宅医療の世界は、決して綺麗事ではありません。急変のリスク、複雑な疾患、亡くなられる利用者さん。そのリアルに向き合いながら、それでも「利用者さんのために」という軸を持ち続けることで、理想のケアを実現してきました。

そしてその背景には、常に支え合えるチームの存在があります。代表の熱さ、副代表の優しさ、看護師さんの強さ。対照的な個性が融合して、firstの文化が作られています。

寺脇さんの言葉から見えてくるのは、単なる「働きやすい職場」ではなく、「一人ひとりが本気で利用者さんと向き合い、互いに支え合いながら成長できる場所」です。

——最後に、これから応募を考えている方にメッセージをお願いします。

在宅医療は、本当に奥が深い世界です。病院では見られなかった、その人の生活そのものに関われます。難しくて悩むこともたくさんあるけど、だからこそおもしろい。利用者さんが良くなったときの喜びは、何物にも代えがたいです。

firstには、困ったときに相談できる環境があります。代表は前を向いて引っ張ってくれますし、副代表はいつも優しく見守ってくれます。そんなチームの中で、自分も成長できる。それを実感しながら働けるのが、firstの魅力だと思います。